Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
濡れた翼
その日、予報外れの雨が降り、何処へ行っていたのか8時を過ぎた頃、拓哉はずぶ濡れで帰宅した。
その姿を見た母親が心配そうに言う。
「どうしたの拓哉ずぶ濡れじゃない。靴は良いからお風呂入っちゃいなさい。」
うん。と声にならない声にで返事をした拓哉。
「……どうしたのかしらあの子。」
拓哉の母親が濡れた靴に新聞紙を丸めて入れながら、心配そうに呟いた。
浴室前で服を脱いでいく拓哉。
大きな鏡に写ったボロボロの脱け殻の様な自分を見て言う。
「……よぉ、ひどい顔だな。お前は……誰なんだ?」
ザァーーーっとスコールの様に屋根を打ち付ける雨。
拓哉は最後に何かを皮肉って笑った。