Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
とくにやることもないし私は一旦家に帰ってゴロゴロしてから駅に向かった。
まだちょっとだけ明るくて、なま暖かい風が吹いていた。
「……や、琴音。」
駅にはもう優斗が来ていて、私に手を振っていた。
「それで、どうしたの?」
ふわっと逆向きの風が吹いて、優斗の匂いがした。
練習して汗かいてるはずなのに、優しい香りがする。
何なんだこの男。笑
「……前にさ、良斗の話したよね。」
「優斗のお兄さん……」
あ、まただ。
不自然なくらいの普通の顔。
「一緒に会いに行こうか。」
突然の誘いに私はすぐに返事ができなかった。
本当に間が悪いっていうか何て言うか……奇麗すぎる星空が私を切なくさせる。
「来て。」
そう言って優斗が私に切符を渡す。
230円の切符。
3つか4つ先の駅だ。
「駆け込み乗車はお止めください。」