Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
私が泣き止むと線香はもう半分もなくなっていた。
肩を抱いたままで優斗が言う。
「良斗は本当に琴音のことが好きだったみたい。容態が悪化して亡くなる四日前に病室で2人きりになった時に言ったんだ。」
真っ暗な墓地から僅かに明かりの灯った駅を見ていると、なんだかぼーっとした。
「もう一度琴音に会いたい。ってさ。」
そっか。って呆気ない返事をしてしまった。
「……良斗くんは優斗の気持ち知ってたの?」
この優しい人の。
私をいつも元気付けてくれた人の、この気持ちを知っていたんだろうか。
「その時、良斗に言われたんだ。もしもオレが先に逝ってしまったら、代わりに琴音に気持ちを伝えて欲しいって。」
本人には分かっていたのかな。
もうすぐ自分が死んでしまうことが、分かっていたのかな。
「ちゃんと約束したのにダメだった。だって琴音に好きって伝えたら、それは良斗の気持ちじゃなくて、僕の気持ちになってしまうから。」
初めて。
初めて優斗が泣くところを見た。
目を瞑ったら零れてしまうから、必死で前を見ているのに、溜まり切った涙がつぅっと頬を伝っていた。
「……優斗。」
私は優斗の涙を拭った。