Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
朝の会が終わって音楽室へと移動する。
「琴音。何で今日はワシタクと一緒じゃなかったの?」
「そうそう。珍しく鷲尾くんだけ先に来たから喧嘩でもしたのかと思ったよ。」
私は移動教室の時とか休み時間はたいがい美穂と亜希と一緒だ。
拓也と一緒なのは登下校だけ。
「うん?分かんない珍しく拓也来なかったから休みかと思ってたくらいだし。って美穂はいつまで拓也をワシタクと呼ぶつもりなの?」
「ワシタクがワシタクである限り……かな。」
で、ででで、出た。
あの関西でまことしやかにあると噂される伝説の「どや顔」!!!!
美穂やっぱりアンタ凄い女だよ。
「なんか鷲尾くん、ちょっぴり元気なさげに見えたけど、琴音知ってる?」
亜希に言われて意識してみると、確かに佐野くんと話している時の表情がいつもと違った……?
「知らない。拓也って別に登下校一緒なだけでメールとか電話とかしないし。」
「え、何それ!?変な関係だねあんた達。」
「そう、かな?」
美穂と亜希はメタルとかのライブの観客ばりに、頭を縦に振った。
首取れないのかな……?そんな心配をする私に。
「琴音はさ。本当に鷲尾くんのこと好きじゃないの?」
「えっ――だって拓也とは幼なじみだし、いつも一緒だったってだけで……」
「幼なじみとか関係なくね?琴音が好きかどうかって聞いてるんだよ。」
言葉が出なかった。
いつもずっと当たり前に傍に居て。
当たり前に学校に通って、家に帰る。
それで、たまに一緒じゃないと、すごく時間が長く感じてしまう。
こんなこと思う私は……
「分かんない。でも、どっちにしろ私は今のままでいれたら良いと思う。」
私は2人より先に音楽室に入っていった。
美穂と亜希は顔を見合せ首を傾げるのだった。