Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
優斗は何だか申し訳なさそうな顔をしていた。
もしや……
「聞いてた……?」
私の質問に珍しく動揺したのか、優斗の肩がビクッと揺れた。
「何をかな……?」
ひきつった笑顔。
「……ぷっ。あはははは。」
「ちょ、なんで笑うのさ!!琴音?」
こんなにも下手な優斗のつくり笑顔を見たのは初めてで、私は可笑しくなってしまった。
「うー……何だよ、もう。」
珍しくふてくされてる優斗を見て、凄くいとおしくなった。
「琴音……?」
私は自分から優斗にキスをした。
ギュッと抱きつく私を、優斗はギュッと抱き締めてくれた。
「ねぇ、優斗。」
「なに?」
私は真っすぐに優斗の瞳を見つめる。
優斗も真っすぐに私だけを見ている。
「何処かに行ったりしないよね?私の前から居なくなっちゃったりしないよね?」
優斗は何も言わずに強く抱き締める。
違うよ優斗。
私が欲しいのは言葉なんだよ。
ただ「居なくなったりしないよ」って言葉が欲しいんだよ。
それだけで安心できるのに……
「ねぇ、琴音。」
「なに?」
優斗は私を抱き締めたままで囁く。
「ホテルいこっか?」