Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
駅前までの真っ直ぐな道。
「……大丈夫か?」
カンペーが心配そうに私を横目で見た。
大丈夫か大丈夫じゃないかで聞かれたら、やっぱり……
「大丈夫なわけねぇよな。いきなり恋人に居なくなられてよ。」
「えっ、カンペーなんで知って……!!」
「バカヤロウ、毎日一緒に過ごしてる教え子のことだぞ。見てたら分かるもんなんだよ。」
カチカチ。と右折する為のウィンカーが点灯する。
昔、母と一度だけ入ったことのあるオルゴール屋さんは今日は閉まっているみたいだ。
「……カンペーはさ。知ってたんだよね?」
私の問いにカンペーが答えるまで間が空く。
言葉を選んでたわけじゃないのはすぐにわかった。
「ああ、知ってた、全部。」
自分から聞いたくせに、その返答に返す言葉が無かった。
そして駅が道添いに見えてきた頃。
「白鳥な。あいつ最後に「悔いはない」って本当に清々しい顔で言ったんだ。だから、オレ達は悲しんじゃいけないと思う。オレ達が立ち止まったりしたらあいつに悔い残させちゃうだろ?」
「……うん、そうだね。」
止まった車。
エンジンが切れて、カンペーが先に外に出た。
まだ暑い夏の空気が流れ込んできたんだ。