Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
「ちょっと拓哉も美穂達探してよ。」
私がせかすと拓哉が立ち止まる。
「拓哉?」
拓哉はじっと私を見ていた。
「……こんな人混みから2人を探すなんて無理だよ。ゆっくり周りながら探せば良いじゃん。」
「そうだけど……」
「分かったら、ほら行くぞ?」
拓哉が私の手を握る。
あまりにも自然で、私は逆に赤面してしまった。
ゆっくり周りながら、なんて拓哉は言ったけど、どこの屋台で何を買うでもなく歩いていく。
拓哉の右手はすごく温かくて。
もう正直、2人を探そうとはしていなかった。
「……さっきさ。」
「うん?」
「久々にお前の笑った顔見れて嬉しかった。」
「えっ……」
前を向いたまま、歩きながらだったけど、これまでにない優しい言葉。
「白鳥が居なくなってからのお前は見てられなかったから。オレじゃあアイツの代わりになってやれないし。」
拓哉の優しさが今の私には辛かった。
「そんなことないよ。拓哉のおかげで私は泣かずに済んだんだもん。」
いつの間にか屋台がなくなる。
ちょっと暗い河川敷に2人。