Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
ドン。ドドドン。
祭りのクライマックスを告げる花火の音と光。
「……おい、花火きれいだぞ。」
「……うん。」
私はまだ拓哉の胸で泣いていた。
「見てねぇじゃねぇかよ。」
もっともなことを言われてちょっとだけ笑いそうになった。
「琴音。」
拓哉にふいに名前を呼ばれて身体がビクッて反応した。
「なに?」
顔を上げると拓哉が真剣な眼差しで私を見つめていた。
「オレじゃ白鳥の代わりになれないかな?」
優しい告白にまた涙が溢れそうになった。
「……うん。優斗の代わりは誰もいないよ。」
「そっか。」
ドカン。
空を埋め尽くすくらいに大きな花火。
パラパラと散っていく光の花びらが綺麗で、綺麗過ぎて。
私の一夏の恋の様にすうっと終わりを告げた。