Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
花火も終わって私達は帰路につく。
閉まりかけの屋台の列を戻ると、美穂と岡崎くん達を見つけた。
「琴音どうしたの?目真っ赤だよ!?」
私を見た美穂がそう心配してくれた。
私は笑顔で返す。
「うん、花火がさ。綺麗過ぎちゃったから。」
「えー?なにそれ?ちょっと意味不だよ。」
「あー、うん。自分でもよく分かんないや。」
私達が笑っていると、岡崎くんが拓哉の隣に寄る。
「拓哉なんかあったんだ?ちょっとスッキリした顔してる。」
「んー?ああ、確かに……ちょっと綺麗過ぎたよな、花火……」
「はぁ?拓哉まで何言ってんだよ?」
次々と色んな夏が終わっていく。
たくさんの思い出は花火の様に大きくきらめいて。
パラパラと散る花びらの様に嫌なことが薄れていく。
これから高校受験があって、入学して、また夏がきて。
色んな人の暑い夏が繰り返されていく。
ふと花火の消えた空を見ると遠くに夏の大三角形が見えた。
それを見て岡崎くんが呟いた。
「夏の大三角形・Sommerliches Doreiek。ああ、夏が終わるな。」
少しの間、立ち止まって私達はその三つ星を眺めていた。