Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
夏祭りの日、拓哉は私を家まで送ってくれた。
「そうだ、これ。」
おもむろに拓哉が取り出したのは
「あっ……それ。」
何時だったか拓哉に貸した詩帆のCDだった。
「良い曲だった。元気出たよ、だから……お前もこれ聞いとけ。」
濡れた翼に温かな手が触れる。
傷ついた羽を優しく撫でられた様で、眠い様な優しい気持ちになる。
「聞いとけって、これ元々私のだし。」
「なぁ……」
「うん?」
拓哉は横をチラチラと見る。
何か言いたげ。
「明日からもまた朝迎えに来て良いか?」
恥ずかしそうに、そう告げた拓哉が面白くて私は笑う。
「ちょ、なんで笑って……」
笑いすぎて涙が出た。
その中の一雫にそれとは違う感情を宿して。
「うん、宜しく。……大好きだよ拓哉。」
「…………おう。」
手を振る拓哉が今までで一番哀しげな顔をした。
私はゆっくりと振り返り玄関を開ける。
「だってさ。こりゃ諦めるのに時間かかりそうだな……」