Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
狭い路地を抜けるとピンク色の世界が広がった。
「うわぁ、コスモスだ。」
土手の斜面いっぱいに咲いた秋桜が、柔らかい風に揺れている。
「凄い。こんな場所あったんだね、知らなかったよ。」
「私も……」
亜季と私は立ち止まって秋桜を見る。
「秋の桜が散って春の桜が咲く頃には、私たち別々の場所にいるんだよね。」
小さく口に出た言葉。
亜季は受けとめてくれた。
「うん、でもずっと友達だし。」
「…………うん。」
幼い約束も夢も何もかも、いつまでその形を残すかは分からない。
でも、その瞬間の私達にはそれは確かな約束で、確かな一瞬で。
過ぎていく日々に栞を挟むみたいにいつの日か、ふと読み返す時が来たら、それで良いのだ。
それで、良いのだ。