Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
「あれな織姫星と彦星って言うんだぜ。」
「織姫星と彦星?」
男の子はその場に立ち上がる。
「あの2つは恋人なんだ。七夕の日に天の川が架かった時にだけ、2人は川を渡って会うことができるんだ。」
「七夕の日にしか会えないの?川を渡らなくちゃ会えないの?」
私の淋しそうな顔を見て男の子はいつもは見せない優しい顔をして言う。
「一年にたった一度しか会えなくても好きでいる。あんなでっかい川を渡ってでも会いたいと思える……これって凄くない?」
今でも私は織姫星と彦星の気持ちが理解できないでいる。
「うん、凄い。でも――」
やっぱり悲しいよ。と言い掛けて私は言葉を止めた。