Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
男の子の声が聞こえて私は立ち上がる。
男の子は小川を挟んだ反対側に満面の笑顔をしながら立っていた。
「私の名前は彦星。今日はあなたに会いに来ました。」
「えっ?えっ――?」
「今からこの天の川を飛び越えてあなたに会いに行きます。」
男の子は助走をつけるために数歩さがる。
そして、意を決すると――
「ダメ!!危ないよ!!」
「大丈夫だよ――とう!!」
全力で走り、男の子は勢い良くジャンプした。
「危ない!!」
小川の端に着地したために柔らかな土が崩れ落ちる。
「うわぁっ!!」
バランスを崩し前のめりに倒れた男の子。
すぐに立ち上がると泥だらけになってしまった顔でニカッと笑顔を見せた。
「お待たせ。織姫星。」
「う……うわぁぁん。」
1人でいた恐怖から解放されて私は声を上げて泣きじゃくった。
男の子はあまり汚れていなかった方の袖で、私の涙をぬぐってくれた。