Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
さかのぼること二日前。
珍しく私に頭を下げる美穂の姿があった。
「本当にお願い。一生のお願い。」
「一生のお願いって……遊園地でダブルデートなんてやだよ私。」
なんでも今美穂は隣のクラスの安藤君にゾッコンらしい。
……ゾッコンて死語かな?なんて考えていると、美穂が私に詰め寄る。
「ほんま頼みますよ姐さん。うちの為に一肌脱いじゃあくれやせんかね?」
「ちょ、なんで任侠(にんきょう)言葉?なんか怖いよ美穂。」
もう頼まれてるんだか、脅されているんだか分からない。
「お願い琴音。遊園地の中のジュースおごるからー。」
「遊園地の中のジュース!?いや、確かに割高で、おごってもらえるとお得感あるけど……じゃなくて。分かったよ今回だけだからね。」
美穂の熱意に押し切られた感じで結局私は遊園地に付き合うことにした。
「さすが琴音。ありがとう。やっぱり遊園地の中のジュースは強いね。」
「おい待て。強いのは私とあんたの友情とかそういう類のアレじゃないのか?」
ルンルン。と鼻歌混じりで美穂は私の的確なツッコミを、背中で流すと隣のクラスへと消えていったのだった。