Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
放課後カラオケ
詩帆さんの透き通る柔らかな声が好きだ。
少し哀しげなメロディも、共感できる歌詞も好き。
「……大丈夫だよ泣かないでいほら……」
頭の中で流れると、いつのまにか口ずさんでしまっている私がいる。
「……私はあなたの笑顔が好き……」
あんまりメディア露出をしない人で、一度しかテレビでは見たことがないけれど。
黒い長い髪、大きな目、華奢な身体。
凄く可愛くて、司会者とのトークから凄く性格の良い女性なんだろうな。って思ったりした。
「詩帆の『濡れた翼』だっけそれ?大好きな人を励まして応援する歌なのに、なんか切ないんだよね。」
亜希にそう言われて私は我に帰る。
どうやら教室で鼻歌を歌ってしまっていたみたい、恥ずかしい。
男子こっち見ないで。。。
「私はあんまり好きじゃなかったな。応援てやっぱりさ元気良くじゃなきゃ出来ない気がするから。」
「……うん。」
亜希の考え方は正しいと思う。
誰かを励ましたり応援したりする時、する側でもされる側でもやっぱり、元気良くしてもらった方が気が紛れるからだ。
でも、私はこの歌が好きだった。
好きなアーティストの曲だから、良く聞こえるんでしょ?って言われてしまったらそうなのかもしれない。
けれど、私はこの歌が好きだった。