Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
休み時間。
佐野くんがいつも通りに拓哉の席にやってくる。
「拓哉。機嫌悪い?」
佐野くんはにこっと、例のキラースマイルで拓哉にそう聞く。
拓哉は不思議そうな顔をしていた。
「はぁ!?何でだよ。」
「いや……なんていうかさ。」
佐野くんはチラっと私の方を見た。
「アレ気になるんじゃないのかな?って思ってさ。」
そう言われて拓哉が私の方を向く。
その視線の先では――
「琴音。次の授業は移動しなきゃならないんだよね?案内してよ。」
優斗が私の席に来ていたのだ。
「何でオレがアイツのことで機嫌悪くならなきゃいけないんだよ。」
拓哉は不機嫌そうにそう言うと次の授業の用意をさっさと始める。
そんな様子を見て、佐野くんが小さく笑った。
「琴音ちゃんのこと好きなくせに。」
そう言われた拓哉はキッと佐野くんを一睨みすると、急ぎ足で教室を出ていった。
「ほんと拓哉は意地っ張り。転校生に琴音ちゃん取られちゃっても知らないからな。」
佐野くんは何か呟いて、肩をすくめながら呆れたと言わんばかりにため息を付いた。
私と美穂、亜希、そして優斗は一番最後に教室を出ていった。