Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
「うーん、何でって言われてもなぁ、テニスが好きだから。……かな。」
にこっ。と綺麗な顔で笑う優斗。
「(だぁ、もう。その胡散臭い笑顔が嫌いなんだよオレは……)」
後頭部から首筋をガリガリと無意識に掻いてしまうのは拓哉が機嫌悪い時のクセだ。
それを知っているのはたぶん私と佐野くんくらいかな。
「白鳥くんは、二年生で全国大会に出場した凄い選手なんだよ。」
テニス部のキャプテン茂森くんが優斗をそうやって紹介した。
「へぇ、凄いじゃん。」
普段に増してぶっきらぼうな言い方。
拓哉は相当機嫌が悪いらしい。
「この中学はずっと県大会止まりらしいね。でも、僕が皆を全国まで連れていくから。」
真剣な優斗の瞳。
ただ真っ直ぐにテニスと向き合っているのが分かってしまう。
拓哉が優斗を嫌いな理由はたぶんそういう所なのだろう。
「だってさシゲ。じゃあもうテニス部に助っ人は要らないよな。じゃあな。」
「えっ……拓哉!?」
そそくさと帰っていく拓哉を見送る茂森くん。
最初に動きだしたのは優斗だった。
「ちょ、鷲尾くん待ってよ!!」