Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
テニスコートからしばらく離れた所で拓哉が立ち止まる。
そして振り返りざまに一睨み。
「何だよ!?」
「ねぇ……助っ人ってどういう意味?」
予想外の反応に拓哉の怒りが少しだけ薄れる。
「どうも何も、言葉の通りの意味だよ。いろんな部活に頭数合わせとかで、大会の前だけ参加したりしてるんだよ。」
優斗の瞳から光が薄れる。
「何だよそれ……」
初めて見せる優斗の表情。
握り締めた拳がワナワナと震えていた。
「君に負けた人達が毎日努力してきたのを君は知っているのかい?」
「は……?そんなこと言ったって実力が上のヤツが勝つんだから仕方ないだろ。」
ギッと睨み付ける優斗の目には涙が一杯に溜まっていた。
拓哉にはその意味が分からなかった。
「運動神経やセンスなんて持ち合わせてなくても、ただ大好きなテニスだからと、必死に打ち込んできた人達を君は侮辱しているんだぞ!!」
ごしごしとワイシャツの袖で涙を拭う優斗。
「……怒鳴ってゴメン。じゃあね。」
またいつもの笑顔を見せて優斗はコートへと戻っていく。
1人残された拓哉。
どこからか沸き上がる感情に気付けずに、拓哉はただ優斗の背中を見送っていた。
「何なんだよ、わけ分かんねぇ……」