Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
『キーン、コーン、カーン。』
「よしっ、ギリギリせぇぇ――
「だから、廊下走んな、って。」
「――ふっ!!痛ぁぁい。」
くせ、カンペーめ一度ならず二度までも出席簿で顔を叩きやがって。
いつか「扉あけたら黒板消しの刑」なんだから。
「ほいじゃホームルーム始めるぞ。今日の日直は鷲尾。」
拓哉の返事はない。
私は拓哉の席を見た。
「……拓哉?」
その席には拓哉の姿はなかった。
「あれ、鷲尾休みか?まだ連絡来てないんだけどな。んー、じゃあ悪いけど明日日直の人頼むわ。」
拓哉の代わりに長谷川君が前に出ようとすると、ガラガラガラっと勢い良く前のドアが開いた。
「悪いカンペー、遅刻した。」
はぁはぁ、と息をきらす拓哉。
チラリと優斗を見ると、すぐに目を反らした。
「確かオレ日直だよな、長谷川も悪い。アリガト。」
何事も無かったかの様に拓哉は日直の仕事を進めていく。
たぶんだけど絶対、拓哉の様子の可笑しさに私と佐野君は気付いていた。
そして、私には分からなかったけれど優斗も。