Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜

優斗はくすりと笑うと、自分の胸ぐらを掴んでいた拓哉の手を振りほどく。

「琴音のこと好きなくせに、告白されないように、告白しないように距離を開けて、逃げてるんだろ?」

私がドキッと胸を痛めた瞬間。

拓哉が飛び出していた。

ゴツッと辺りに響いた音。

「ほら……図星だろ?」

優斗を殴り、更に頭に血が上った拓哉が馬乗りになる。

私は異変を感じて校門から飛び出していた。

「やめて拓哉!!」

握りこんでいた拓哉の拳が空を切る。

左頬にアザが出来ていた優斗が笑いながら言う。

「やっ琴音。偶然だね。」

私は全身から血の気が引いていくのを感じた。

「何してるの優斗?何してるの……拓哉?ねぇ!?」

私は必死で優斗から拓哉を引き剥がした。

拓哉は一度も私と目を合わせようともしないまま、舌打ちをすると去っていってしまった。

わけ分かんないよ。

どうして2人が……

何で私のことで、こんな。

「痛ってててて。拓哉を追い掛けなくて良いの?琴音。」

にっこりと笑う優斗。

まるで何かを試されているかのような気がして、ようやく私は正気を取り戻すのだった。

「怪我人を置いていけるわけないじゃない。まだ保健の先生いたはずだから、保健室いこう。」

「……そだね。」





< 60 / 195 >

この作品をシェア

pagetop