Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
優斗はくすりと笑うと、自分の胸ぐらを掴んでいた拓哉の手を振りほどく。
「琴音のこと好きなくせに、告白されないように、告白しないように距離を開けて、逃げてるんだろ?」
私がドキッと胸を痛めた瞬間。
拓哉が飛び出していた。
ゴツッと辺りに響いた音。
「ほら……図星だろ?」
優斗を殴り、更に頭に血が上った拓哉が馬乗りになる。
私は異変を感じて校門から飛び出していた。
「やめて拓哉!!」
握りこんでいた拓哉の拳が空を切る。
左頬にアザが出来ていた優斗が笑いながら言う。
「やっ琴音。偶然だね。」
私は全身から血の気が引いていくのを感じた。
「何してるの優斗?何してるの……拓哉?ねぇ!?」
私は必死で優斗から拓哉を引き剥がした。
拓哉は一度も私と目を合わせようともしないまま、舌打ちをすると去っていってしまった。
わけ分かんないよ。
どうして2人が……
何で私のことで、こんな。
「痛ってててて。拓哉を追い掛けなくて良いの?琴音。」
にっこりと笑う優斗。
まるで何かを試されているかのような気がして、ようやく私は正気を取り戻すのだった。
「怪我人を置いていけるわけないじゃない。まだ保健の先生いたはずだから、保健室いこう。」
「……そだね。」