Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
そんなこんなで、そりゃあもういろんな意味でテストも終わり、放課後。
「拓也。今日は一緒に帰る?」
そう。私と拓也は帰りもほぼ一緒。
でもたまに別々に帰るときもあるんだ。
そういう日はだいたいが拓也の都合。
「今日は野球部の助っ人あるから無理。ほんじゃな。」
そう、言って拓也はグランドに駈けていく。
拓也はスポーツは何でもできる。
色んな部から助っ人として呼ばれるほど。
でも、どれか決まった部に在籍していたことはないみたい。
理由は教えてくれない。それが少しだけ寂しい。
「頑張れー。」
私がそう言うと、拓也は振り向きもしないで手を振った。
格好付いてないんだけどねアレ。
「さてと、じゃあ1人で帰ろうかな。」
グランドに駈けていく拓也の背中が少しだけ大きく見えた。
沈んでいく太陽が眩しい。
それはこれから始まる私達の忘れられない夏を予感させていた。