君だけに夢をもう一度 15の心
正和の部屋には、レコードプレーヤーがなかった。
そのため、カセットで『Dear John』を真紀子に聞かせた。

歌が終わるまで、真紀子は静かに聞き入っていた。

「いい歌ね」
聞き終わった真紀子が言った。
その表情は穏やかだった。

「俺、この歌を聞いて泣いたんだ。今まで、野球でダメだったことを思いだして、急に悔しいことなんかがこみ上げてきて・・・・・・」

「・・・・・・」
真紀子が黙ったまま聞いている。

「音楽を聞いて泣くなんて、初めての経験だった。そして、なんだかわからなかったけど、感動したんだ。俺、そのことを確かめたいんだ・・・・・・」

「確かめたい・・・・・・? 」

「自分も音楽をやって、そんなふうに人を感動できるか、どうか・・・・・・」
正和が、真紀子に素直な気持ちを言った。

「そう・・・・・・」
真紀子は、一言、そう答えた。

いっもは反論する真紀子は、その時ばかりは何を言わずうなずいていた。

正和は、真紀子が、音楽をやる気持ちをわかってくれたような気がした。





< 128 / 239 >

この作品をシェア

pagetop