君だけに夢をもう一度 15の心
「だから、そのことはいいんだ・・・・・・なぁ・・・・・・二人に頼みたいことがあるんだ」
竹中が振り返って言った。
その表情は、どこか暗い感じで涙ぐんだ顔だった。

「何だ・・・・・・? 」
正和は、悲痛な表情に驚きながらも聞いた。

「来月、ここでミニコンサートやらないか? 」

「コンサート・・・・・・?」
正和も小田も首をかしげた。

竹中の言っている意味がわからない。
失恋から急に、なぜコンサートに話が変わるのかわからなかった。

「人に聞かせるためには、時間がかかると思うけど・・・・・・」
小田は、演奏の腕前のことを心配した。

「そうだな・・・・・・来月は無理じゃないかな・・・・・・」
正和も小田と同じ考えだった。

「下手でもいいんだ! 親父に聞かせてやりたいんだ!! 」
竹中が涙ながらに叫ぶように言った。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「親父が病気なんだ・・・・・・」
竹中が手で涙を拭った。

「病気って・・・・・・?」
正和が尋ねた。

「親父はガンなんだ・・・・・・あと、生きられても一年だって・・・・・・」
竹中は顔をくしゃくしゃにして泣きながら言った。







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