君だけに夢をもう一度 15の心
「俺、高校卒業したら、家の仕事を継ごうと思っている」
竹中が泣くのをやめて言った。

「親父は、そんなことしなくていいから、おまえの好きなようにやればいいって言ってくれたけど・・・・・・」

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「小さいけど、親父が作った工場だから守りたいんだ」
竹中は、強く決心したように言った。

竹中は、父親が留守の間、工場の手伝いをしていた。
そのため学校を休んでいた。

「卒業式には行くから・・・・・・」
振り返って竹中が言った。

「わかった・・・・・・」
正和が返事をした。

再び、竹中は二人に背中を向けて、ギターを弾き始めた。
その後ろ姿は、どこか悲しさを感じたが、それと同時に何か違うものも感じた。

竹中は失恋ぐらいで、へこむような弱い男じゃない。

父親の死によって、自分の将来を決めた15歳の竹中は立派だと思った。
そして、自分よりも先に大人になった気がした。
正和は、竹中の背中を見て、そう思った。












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