君だけに夢をもう一度 15の心
正和に眠気が誘った。
このまま眠ってしまうと、真紀子がいなくなるかもしれない。
そう思うと、必死に起きていた。

しかし、眠気の誘惑には勝てずに、そのまま眠ってしまった。

正和が目を覚ますと、真紀子の姿が見当たらない。
慌てて周りを見渡すと、目の前の砂浜に座っている真紀子の後ろ姿があった。

「どうしたんだ? 」
正和は真紀子に近づいた。

「あれ」
真紀子が指さした。
指さした方向は、青ざめた地平線の向こうから朝日が昇り始めていた。

「あっ! 」
正和が空を見上げると、かすかだが雲のすき間から月が見えた。

「夜明けの月だ」と、言って歌を口ずさんだ。

「なんていう歌? 」
真紀子が笑顔で聞いた。

その時の真紀子は、優しい表情になっていた。
さきほどまでの悲痛の面影はなかった。

「サザンの『朝方ムーンライト』って歌なんだ」
と、正和は説明して、再び口ずさんだ。

真紀子は、空を見上げて夜明けの月を見た。

< 224 / 239 >

この作品をシェア

pagetop