坂口美里とガルダスト

「美里、お前にお客さん。男から。」


 扉から顔だけ出して口にする兄貴。


 妙に「男」の部分だけを強調されても。


「どうせ、隆でしょ?」


 分かっていることだから、別段驚かない。


 机に手をつけて立ち上がると、入り口まで歩を進める。


 男と女の壁。


 悔しいが、兄貴は私の頭二つ分背が高い。


「まあ、そうだけどよ。お前たまには、女友達とか呼べよな?」


「美雪に手を付けたのはどこのどいつだよ?兄貴が家にいて、簡単に友達を呼べるわけないでしょ?」


 スネに思いっきり蹴りを食らわす私。


「ぐわっ!」


 瞬間、兄貴の顔が苦痛に歪んでしゃがみこむが、こっちの知ったこっちゃない。


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