雲間のレゾンデートル
 なんだか空しい気持ちがじわっと溢れて来てそれにつられてテンションを下げたくないあたしはそのまま空を眺める。


 夕暮れの綺麗なグラデーションはいつの間にかナリを潜め、夜の群青色も後からやってきた灰色というよりは炭みたいな黒い雲に覆われていた。


 さっきまでの見事な夕暮れがこれまた嘘みたいにどっかに行っちゃってる。

 それにいつの間にか雨の匂いと肌に纏わりつくような空気がそこまで来ていた。

 ああ、降っちゃうのかなぁ、と思っている傍からポツ、ポツ…と肌に水滴が当たる。


「やばいなー。コンビニで傘…ううん、マックかネカフェに行こうか…」


 降っちゃうならどうにかしなきゃなーって思って幾つか選択肢を弾き出しているとポツポツという雨音のリズムが次第に速くなり、そしてボリュームが上がる。

 道路にじわりと染みを広げそれをぼんやり眺める暇も無く墨色の雲から漏れ落ちた雨が怒涛の勢いでアスファルトとあたしを打ちつけた。
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