雲間のレゾンデートル
 これまた簡潔な隆ちゃんの説明にあたしは「そっかー」と適当に相づちを打ちながら上り口に腰かけた。

 タオルで乾き切ってない髪の毛を拭きながらずぶ濡れの紺ハイソを引っ張り脱ぐ。

 車に乗った時に渡された濡れたタオルの上にそれを置くと隆ちゃんが引いてくれた。


「洗濯物、持っていきますね」

「んーありがと。じゃ、ただいま言ってくる」


 あたしはバッグからケータイを取り出しタオルで軽く足を拭って上がる。

 まだ湿ってるみたいでペタペタと音を立てながら廊下を歩いて奥の日本間に向かった。


 襖を引いて部屋の奥にある仏壇へと進んでその前にちゃんと正座する。


「ただいま、おかーさん、おとーさん」


 こうやって毎日帰ってきたら仏壇に飾られた写真の前でちゃんと挨拶するのは習慣。

 適当女王って言われてもこれだけは正しくするようにおじーちゃんに言われてるから。
< 28 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop