雲間のレゾンデートル
「あたしって何なんだろうね?」


 あたししかいない和室で誰に問いかけるでなくこぼした言葉がポツリと響く。


 その言葉を他人事みたいに聞いてすぐに思いついたのが『ヤクザの一人娘』。


 たぶん隆ちゃんや松さんや秀さん――うちに出入り人達にとってあたしはおじーちゃんの一人娘の忘れ形見で『親分の孫娘』。

 だからこんなにも大事にされてるんだと思う。


 でもさ、それってあたしがおじーちゃんの、――ヤクザの娘だからこそ大事にしてもらえてるだけなんだよね?

 早くに死んじゃったおかーさんの分まで大事に、って事で。
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