雲間のレゾンデートル
 さっきまでの他愛の無い会話が嘘みたいに消え、大原君は黙って足元を見つめている。

 忍び寄る夜の群青が夕暮れのオレンジと交じり合い綺麗なグラデーションを描いてた。


 そんな薄暗いオレンジ色の光を浴びて俯いているから大原君の表情ははっきりと見えない。

 だけど彼を取り巻く空気でなんとなくあたしは察してしまった。


 ――ああ、大原君も知っちゃったんだなぁ。


 割ともった方だと思ったんだけど、喉まで出かかった言葉を飲み込んであたしは俯いたままの大原君の唇に注目した。

 暫く動かず真一文字を保ったままの唇が震えるように小さく動く。

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