しずめの遭難日記

「しぃずぅ。神楽さん、あんま嫌っちゃなんねぇぞ。神楽さんはしぃずぅのお母さんなんだからなぁ」
　祖母は私にそう言って、最後に体に気をつけるよう言い残して電話を切ったのだ。
　なんなの！みんなしてあの女の味方して！きっとおばあちゃんは私の手紙をよく読んでいないんだわ！あの女がいかに何もできないかを書いたのに！

　その日から、しばらくしずめの日記は途絶えていた。
　野上は、パラパラとページを飛ばし読みをしてゆく。しずめの日記が次に再会されたのは１０月ほどからだった。内容は、相も変わらず父親の再婚者への不平不満に、亡き母への愁嘆が連なれている。
　野上は、わずか１４の少女の心の葛藤に心が締め付けられる思いがしたが、今はそれよりも行方不明になっている新野一家の手がかりとなる文章を見つける事だ。
　野上が更に、しずめの日記で新野一家の行方の手がかりになる箇所を探して行くと、月日は年をまたぎ、とうとう２月も終わりにさしかかった２０日の日記に目が止まった。
　この日、新野一家は、名古屋に程近い自宅から、ここ、長野に向かって旅に出ている。
　日記の題名には『つまんない』と銘打ってあった。