しずめの遭難日記
全ての準備が整うと、いよいよ登山開始だ。今回私達が登る山は、私が夏に父に連れられて登る山よりかなり低いので、私はほとんどピクニック気分だ。あの女は登山開始後、すぐに息を切らしていた。まったく、やっぱり一番のお荷物だ。
登山開始後二時間くらいが過ぎたところで、私達は一度休憩をとった。休憩をとった場所は木があまり茂っていない広い場所だった。そこで座る場所を作り、ポットに入れた温かいお茶と、祖母が作ってくれた美味しいお弁当を広げる。
「神楽。どう?初めて登山してみた感想は?」
父は、やっと息が落ち着きかけた女に湯気の出ているコーヒーを手渡すと、女の隣りにしゃがみ込んで何やら話をしていた。私は、父があの女の事ばかりをかまうので気に入らなかったが、私ももう子供ではない。父が最初に私に声をかけなかったからって不機嫌な態度は見せないようにしよう。
父と女がしばらく話をしていたので、私は木々の合間から見える下の景色に目をやっていた。
一面の銀世界…。と言うには、ちょっと木の葉の緑やら、下界に見える街の建物やらが目につく。こんな山で、昔父は遭難にあいそうになったというのだから笑い話だ。私なら、後二山くらい越えたってちゃんと道がわかるのに。
「それは本当ですか?」
不意に女が上げた大きな声に、私は思わず女の方を振り向く。女は私が振り向いた事に驚いたのか、口に手を当て作り笑いをする。その後で、女は私に手で近くに来るよう、おいでおいでをしたので、私はしかたなく、父と女がいる所へと歩いて行った。ちょうど、飲み物が切れたので、代わりをとるついでにいっただけだけど…。
「鍛治さんがね。この山で遭難にあいそうになった時、山のてっぺんから海が見えたんだって。信じられる?」
登山開始後二時間くらいが過ぎたところで、私達は一度休憩をとった。休憩をとった場所は木があまり茂っていない広い場所だった。そこで座る場所を作り、ポットに入れた温かいお茶と、祖母が作ってくれた美味しいお弁当を広げる。
「神楽。どう?初めて登山してみた感想は?」
父は、やっと息が落ち着きかけた女に湯気の出ているコーヒーを手渡すと、女の隣りにしゃがみ込んで何やら話をしていた。私は、父があの女の事ばかりをかまうので気に入らなかったが、私ももう子供ではない。父が最初に私に声をかけなかったからって不機嫌な態度は見せないようにしよう。
父と女がしばらく話をしていたので、私は木々の合間から見える下の景色に目をやっていた。
一面の銀世界…。と言うには、ちょっと木の葉の緑やら、下界に見える街の建物やらが目につく。こんな山で、昔父は遭難にあいそうになったというのだから笑い話だ。私なら、後二山くらい越えたってちゃんと道がわかるのに。
「それは本当ですか?」
不意に女が上げた大きな声に、私は思わず女の方を振り向く。女は私が振り向いた事に驚いたのか、口に手を当て作り笑いをする。その後で、女は私に手で近くに来るよう、おいでおいでをしたので、私はしかたなく、父と女がいる所へと歩いて行った。ちょうど、飲み物が切れたので、代わりをとるついでにいっただけだけど…。
「鍛治さんがね。この山で遭難にあいそうになった時、山のてっぺんから海が見えたんだって。信じられる?」