しずめの遭難日記

無謀な登山計画

 ―2月22日―
 今日も、昨日に引き続き快晴だ。私と父はカメラを取り出し、まだ日が出る前の薄らいだ外に出て、その瞬間を待ちわびる。
 太陽が東から顔を出すと、金色の光が白い雪山を照らし、雪山は何とも言えない美しさとなる。私と父は夢中で、思い思いにシャッターを切る。
「昨夜の星空も素晴らしかったけど、日に照らされた雪山もまた格別ですね」
 シャッターを切る父と私に、女は温かいコーヒーを手渡した。
「そうだろう?雪山が良いって言うのはこれにあるんだ。空気が澄んでるし、人もいないから大自然と一体になった気分が味わえる。苦労して登ってくる甲斐があるってもんだ」
 父は山の話しになると、実に楽しそうに話をする。語り出すと長いので、私は父が山の話を始めたら、とにかく聞き流すようにしているのだが、馬鹿な女はそんな父の話を熱心に聞くものだから、父の山談議が終わった頃には、日はかなり高いところまで昇ってしまった。
「お父さん。私、海が見たい。海、見えるんだよね?」
 いつまでもお喋りの止まない父に、私はふと、そんな問いかけをしてみた。
「海………か?」
 父は、そんな私の問いかけに、少々困った表情をしてうなった。
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