しずめの遭難日記
そうと決まれば、早速出発だ。私達は手早くテントをたたみ、本当に海が見えそうな、一番高い山の頂上を目指して歩き出した。
風が強く、途中何度か足を踏み外しそうになるが、私達はお互いの手を取り合って頂上を目指した。
「お父さん。これ何?」
頂上を目指している私の視界に、何やら珍しい物が映り、私は思わず足を止めた。
「ん?それは………」
私が指差したのは、無惨にへし折られた一本の杉の木だった。よく見ると、雪から顔を覗かしている樹木の至る所に、何か強い力でひっかいたような痕がたくさん見受けられる。
「……熊だな」
私は父の答えに思わずギョッとした。熊など、地元の動物園で檻の中に入っている物しか見たことがない。
「ははは。大丈夫。熊は確かに獰猛な生き物だが、人を襲う事は滅多にない。これは熊のなわばりを示すマーキングだな。まぁ、今は冬眠してる筈だし、問題はない。それより、あんまり俺の側を離れるなよ。この辺りは雪が深くて視界が悪い。どこからが崖なのか分かったもんじゃないからな」
父が私にそう注意を促した時、私の視界にまた別の物が映った。それは、白い羽毛に、まだらな黒い筋の模様がある美しい鳥だった。
「………綺麗」
私が見つけたのは、雷鳥という珍しい鳥だった。雷鳥という鳥は、夏と冬では羽毛の色が違う。冬には雪に溶け込むように、その羽毛が白く、美しい模様を描く。私は、その美しい羽根を持つ鳥をもっと近くで見ようと、鳥の方へ近づいて行った。
その途端。
風が強く、途中何度か足を踏み外しそうになるが、私達はお互いの手を取り合って頂上を目指した。
「お父さん。これ何?」
頂上を目指している私の視界に、何やら珍しい物が映り、私は思わず足を止めた。
「ん?それは………」
私が指差したのは、無惨にへし折られた一本の杉の木だった。よく見ると、雪から顔を覗かしている樹木の至る所に、何か強い力でひっかいたような痕がたくさん見受けられる。
「……熊だな」
私は父の答えに思わずギョッとした。熊など、地元の動物園で檻の中に入っている物しか見たことがない。
「ははは。大丈夫。熊は確かに獰猛な生き物だが、人を襲う事は滅多にない。これは熊のなわばりを示すマーキングだな。まぁ、今は冬眠してる筈だし、問題はない。それより、あんまり俺の側を離れるなよ。この辺りは雪が深くて視界が悪い。どこからが崖なのか分かったもんじゃないからな」
父が私にそう注意を促した時、私の視界にまた別の物が映った。それは、白い羽毛に、まだらな黒い筋の模様がある美しい鳥だった。
「………綺麗」
私が見つけたのは、雷鳥という珍しい鳥だった。雷鳥という鳥は、夏と冬では羽毛の色が違う。冬には雪に溶け込むように、その羽毛が白く、美しい模様を描く。私は、その美しい羽根を持つ鳥をもっと近くで見ようと、鳥の方へ近づいて行った。
その途端。