しずめの遭難日記
「私と鍛治さんは同じ会社で働いていたのね。私は一目見て、鍛治さんの事、素敵だなって感じたの。でも、私が入社した時には鍛治さんはもう結婚していたし、私の鍛治さんへの気持ちは一方通行でしかなかった。入社して少し経った時ね、私ちょっと事件を起こしてしまって…まぁ、正確には起こされたんだけど、しばらくの間仕事をお休みしたの。そんな時、上司である鍛治さんが何度も電話をいれてくれてね。私は嬉しかったなぁ…。でも、それは上司としての様子見の電話だったんだけどね。鍛治さんは仕事の事は勿論だけど、その他の下らない雑談もたくさんしてくれて、私に早く仕事に復帰するよう励ましてくれたの」
神楽さんの話を総合すると、神楽さんが何かの原因で仕事を休んでいる時に、父が彼女に呼びかけ、いろいろと励ましたのだという。神楽さんは、元々父に好意を持っていたという事もあり、益々父の事が気になりだした。神楽さんは父の雑談の中から、母の事、私の事を知ったのだという。
「神楽さんみたいな真面目そうな人が仕事を休んでたなんて、何があったの?」
私は興味本意でそう聞くと、神楽さんは「しずめちゃんにはまだ早い話よ」と、答えをはぐらかされた。
「…で、鍛治さんの働きかけもあって、私はまた仕事に復帰する事ができたんだけど、そんな時、鍛治さんの奥さんが病気だという事も聞きまして、鍛治さんはひどく落ち込んでいられました。そしてとうとう奥様が亡くなられた時の落ち込んだ鍛治さんの姿は、今でも忘れる事ができません。で、私思ったんです。この人のために私は何かできないかな?って。私にできる事は少なかったんですけど、けれど、私でも落ち込んだ鍛治さんを慰める事くらいはできた。私はそれで幸せだったんです」
神楽さんの話を総合すると、神楽さんが何かの原因で仕事を休んでいる時に、父が彼女に呼びかけ、いろいろと励ましたのだという。神楽さんは、元々父に好意を持っていたという事もあり、益々父の事が気になりだした。神楽さんは父の雑談の中から、母の事、私の事を知ったのだという。
「神楽さんみたいな真面目そうな人が仕事を休んでたなんて、何があったの?」
私は興味本意でそう聞くと、神楽さんは「しずめちゃんにはまだ早い話よ」と、答えをはぐらかされた。
「…で、鍛治さんの働きかけもあって、私はまた仕事に復帰する事ができたんだけど、そんな時、鍛治さんの奥さんが病気だという事も聞きまして、鍛治さんはひどく落ち込んでいられました。そしてとうとう奥様が亡くなられた時の落ち込んだ鍛治さんの姿は、今でも忘れる事ができません。で、私思ったんです。この人のために私は何かできないかな?って。私にできる事は少なかったんですけど、けれど、私でも落ち込んだ鍛治さんを慰める事くらいはできた。私はそれで幸せだったんです」