世紀末の恋の色は
彼が瞳と口を閉ざしたことで、書斎にはまた沈黙が降りる。

びゅうびゅうと吹き付ける風の音が、先ほどよりも増していた。

ばさばさ、ばたばた……。

強すぎる夜風の中に、怒りに身を任せて飛び回る吸血鬼の羽音の幻聴が混じる。

びくり、レナは思わず身を竦ませた。

……もし自分がここにいるのを見つけられたら。

そうしたらアルフやセシルはどうなってしまうのだろう?

ぎゅ、とレナはその晴れた空の瞳を閉じる。

その様子をアルフレートが見つめていることに、レナは気付かない。

やがてアルフレートは椅子から腰を上げると、分厚いカーテンを開け放ち、窓の外を睨め付ける。


「小者が、五月蠅いな…」


黙れ。

発音をなさずに彼の唇だけがそう動いた瞬間、遠くからでけたたましい雷鳴が響き渡った。

冬の雷。

息を詰めた声がして、アルフレートは背後を振り返る。

彼の想像通りに、レナは両手で自分の身体を抱き締めて固まっていた。



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