世紀末の恋の色は
がちん、と効果音の付きそうな様子でレナの表情が固まった。


「僕が見掛けた貴婦人は、胸から血染めの刃が生えていましたねえ。……ああ大丈夫ですよ、レナ様のお部屋と蝋燭の灯った廊下は絶対安全だってアルフレートが言ってました」


そんなことも、セシルは心の底から楽しげに言ってのける。

彼の話しに翻弄されているうちに、レナは何時しか玄関の大きな扉の前に来ていた。


「はい、これを着て」


何処から取り出したのか分からないが、いつの間にやらセシルはその手に厚手のコートを持っている。


「ありがとう、だけどセシルはその格好で平気なの?」


彼が纏っているのは飾りの多い薄手のシャツに、黒い毛糸のベストと細身のパンツだけ。


「レナ様は、お優しいですね。大丈夫ですよ、僕もアルフも寒いのは苦になりませんから」


何度目かセシルは微笑い、彼に微笑われるとレナはそれ以上何も言えなくなるのだった。



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