世紀末の恋の色は
「……だが」


三歩の距離を声が飛び、追ってアルフレートは足を踏み出す。


「もし、『お前』が何物かに怯えていて」


一歩。

羊ではなくレナが怯えていて。


「この安息の夜に眠れぬと言うなら」


二歩。

今のように孤独に泣いているならいっそ。


「思い切り泣いて、そんなことなど忘れてしまえ」


三歩。

囁くように言って、アルフは長い指でレナの頬の涙の 跡をなぞる。

これまで経験したことのない速度で目の奥が熱くなるのを、レナは止められなかった。

目の前のアルフレートの胸に、すがらずにはいられなかった。

声も押さえずに、ただ思い切り泣いた。

なぜ泣いているのか分からなくなるまで泣いて、泣いて。

その間中、アルフレートはそのぶっきらぼうな言い方とはかけ離れた優しい腕で、崩れ落ちそうな細い身体を支えていた。



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