世紀末の恋の色は
蝋燭の炎が、レナの柔らかい金の髪を縁取る。

空色の瞳は今は瞼の向こうに隠れてしまっていた。

頬は林檎で、唇はほんの少しだけ開き、胸は呼吸に合わせて上下する。


「無防備なことだな」


狼が小羊に興味を示さないはずがないのだが、とアルフレートはレナに言ってやりたくなった。

自分が男の目にどのように映るか、おそらくは何も知らぬのだろう。

一つ溜め息をつくと、アルフレートはその赤い瞳を戸口へと向ける。


「で、お前は何時までそこにいるつもりだ?」

「あはは、やっぱりばれてましたか」


深夜だと言うのに陽気な声で、セシルが部屋の扉の向こうから姿を現した。

その手は柔らかそうな毛布を抱えている。


「でもアルフレートが誰かに子守歌を歌ってあげるところなんて、滅多に見れるものじゃありませんし」


悪びれずに言いながら、セシルはその毛布でレナの身体を包んだ。


「ん……」


小さく身動ぎをして、レナは毛布の端を白い手で握り込む。

楽しそうな表情は崩さずに、セシルは呟く。


「……可愛い人ですね」


それにアルフレートは皮肉の一つや二つでも言うだろうとセシルは思っていたが、期待に反して彼は何も言わない。

少し表情を真顔にしながら、セシルはアルフレートを振り向く。

赤い瞳はセシルには向けられてはいなかった。



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