世紀末の恋の色は
「いつもなら即断即決、しがらみなんてそれこそ歯牙にも掛けないのに」


未だ笑いを浮かべたまま、セシルはかぶりを振った。

おそらくアルフレートは迷っている。

吸血鬼の件が解決したら、レナ様は元の村へ帰ってしまうから。


「でもアルフレートが言ったとおり、そろそろ動き時。
 これ以上判断を保留するのはアルフレートにもレナ様にも僕にもついでに村にも良くないこと」


焦がれては、いけない。

触れては、ならない。

彼女は、これ以上こちらに関わってはいけない。

そんなことは、重々承知している。


だから、彼は一人で散歩に出たレナに大切なことを教えなかった。

どんな結果を生むか予想して、その上で無防備なレナを屋敷の外に出した。


「きっとアルフレートに怒られるでしょうね。だけど、僕はアルフレートのことが好きだし、レナ様のことも好きになってしまったから」


セシルは空を見上げる。

言葉とは裏腹に、彼は早くアルフレートがレナの不在に気付いてくれることを願っていた。

……冬の陽は、弱いながらもまだ高い。



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