世紀末の恋の色は
第二章
濡れた服を着替えた後に出された紅茶からは、盛大に良い香りの湯気が立ち上っていた。
身体の芯から冷えていたレナは、胃の腑からじわりと広がる温もりに吐息を零す。
彼女は所詮田舎の出ゆえ紅茶の味などよく分からない。
が、優しい香りと繊細な甘さは、自身が高級品であると雄弁に主張していた。
カップの白い底が見えるまで飲み尽くしてしまってから、レナはふ、と息を吐く。
彼女がいるのは屋敷の一室。
広い窓は分厚いベージュのカーテンで覆われており、白い無味乾燥な壁土がむき出しの、殺風景な部屋。
広々とした部屋に置かれているのは、机と椅子がそれぞれ一つと、ベッドのみ。
しかし、その重厚さはどうであろう。
良く分からない男だけれど、取りあえず財産家なのか、とレナは手に持ったままのカップを見つめる。
くすみのない白磁には、藍色と金で複雑な花と蔦の模様が描かれている。
これ一つが果たして幾らするのか、彼女には見当もつかない。
大体、と彼女は着替えたドレスを見下ろす。
繊細な幾重にも重ねられたレースに、驚くほど肌触りの良い生地。
それは田舎育ちの彼女では、見たことすらないような高価な布で作られているのだろう。
妙なことになった、腰をあげながら彼女はそう思う。
……が、差し当たって彼女は彼の元へ行かなければならなかった。
赤目の男が屋敷に着くなり、彼女をこの部屋に案内し、着替えと紅茶を出して行った優男の言葉がよみがえる。
『一息ついたらアルフレートの部屋まで来て下さい。蝋燭の明かり通りに廊下をたどって行けばつけますから。
でも……くれぐれも明かりの道から逸れてはだめですよ?』
.
身体の芯から冷えていたレナは、胃の腑からじわりと広がる温もりに吐息を零す。
彼女は所詮田舎の出ゆえ紅茶の味などよく分からない。
が、優しい香りと繊細な甘さは、自身が高級品であると雄弁に主張していた。
カップの白い底が見えるまで飲み尽くしてしまってから、レナはふ、と息を吐く。
彼女がいるのは屋敷の一室。
広い窓は分厚いベージュのカーテンで覆われており、白い無味乾燥な壁土がむき出しの、殺風景な部屋。
広々とした部屋に置かれているのは、机と椅子がそれぞれ一つと、ベッドのみ。
しかし、その重厚さはどうであろう。
良く分からない男だけれど、取りあえず財産家なのか、とレナは手に持ったままのカップを見つめる。
くすみのない白磁には、藍色と金で複雑な花と蔦の模様が描かれている。
これ一つが果たして幾らするのか、彼女には見当もつかない。
大体、と彼女は着替えたドレスを見下ろす。
繊細な幾重にも重ねられたレースに、驚くほど肌触りの良い生地。
それは田舎育ちの彼女では、見たことすらないような高価な布で作られているのだろう。
妙なことになった、腰をあげながら彼女はそう思う。
……が、差し当たって彼女は彼の元へ行かなければならなかった。
赤目の男が屋敷に着くなり、彼女をこの部屋に案内し、着替えと紅茶を出して行った優男の言葉がよみがえる。
『一息ついたらアルフレートの部屋まで来て下さい。蝋燭の明かり通りに廊下をたどって行けばつけますから。
でも……くれぐれも明かりの道から逸れてはだめですよ?』
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