君だけに送るエール【短編】
「諱花ーっ!!
英語の鈴木がってうわぁっ!」

長谷部の言葉を遮るように姿を現す前から声だけが先行して私達の間に入り込み、私に若干覆いかぶさるように身を乗り出していた長谷部を見て俊介はかなり顔を青ざめさせて駆け寄って来た。


「ええぇっとあの取り込み中ごめんっあのっ来んなって言われたんだけど用事あったからしょうがないかなってあの…」

なんか言い訳する小さい子供のように必死の形相でしどろもどろに言葉を出す俊介。
なんだこれ。見たことないぞ。

顔も真っ赤で、でも、そんなでも俊介の声を聞いた途端、自分でも気付かなかった変な緊張が抜けたのがわかる。

も、ほんと……あんた私のなんなのさ。


「…来るなって言われた上に取り込み中だと思ったんなら邪魔しないで下さいよ」

俊介を睨み上げるようにして顔を上げた長谷部が立ち上がって俊介を真っ向から見据える。
なんだこの空気。

「せめてこの後の邪魔はしないで下さいね」


穏やかに、それでも私が知る彼の中では確かにそれは威圧を込めた声音でそう言うと、長谷部は私に向き直った。

再び私の背筋にわかりやすく緊張が走る。


そして真剣な眼差しで私を見下ろし、口を開いた。



「俺、ずっと諱花先輩の事好きでした。
俺と付き合って下さい」
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