きっとずっと
この木はお母さんの話では樹齢百年を越える凄い木らしい。周りにもたくさんの桜の木がどっしりと腰を置いているが、どれもこの木にはかなわない。
歴史を感じさせる苔ねようなものが表面にあって触るのは遠慮したくなるけど、小さな頃から泣くときはいつもこの木に背中を預けていた。
春にはこれでもか、って位たくさんの花を咲かせる。
なのでこの公園はここらではちょっと有名な花見スポットだ。
春にこの場所で花見をするには徹夜覚悟でいかなくては駄目らしい。
桜は本当に綺麗だけど、さすがに徹夜してまでは見ることはないので、一度もここで花見をしたことはないけど。
でも、この木が私達のお気に入りの場所になったのは、樹齢が長いからでも、花がすばらしいからでもない。
「……桜?」
突然の呼び掛けに振りかえると、ようやくお目当ての人物がやってきたらしい。
しっかり帽子かぶって暑さ対策しているのがいささか気に入らないが。
「わりぃ桜!!フツーに寝過ごした!!」
そう言いながら走ってくる恋人に私の頬は勝手に緩んでいく。
彼の名前は塙山 賢。
幼稚園から仲のいい幼なじみ、だったのは一ヶ月前までで、今は私の初めての彼氏。