ぐらんでぃおーそ。
何枚か拾い、楽器少女の元へ持っていく。

「はい」

バラバラになった紙を少し揃え楽器少女に渡すと、「どーも」と笑顔で受け取った。

「外で練習するといっつも飛んでいくんだよね」

アハハと笑いながら紙を順番に入れ替えていく。

栄光はジャージに付いている名前を見る。



山田 花子



そう刺繍されていた。

(今時、山田に花子ってなくない?)

全国の山田花子さんには申し訳ないが、ちょっとダサい。

そんなこと思っていると、山田花子が笑いながら「これ、偽名だから」と言った。

「偽名?」

「そう、偽名。ホントはエビナハルキ」

木の枝で地面に『蛯名悠樹』と汚い字で書いていく。

「画数多くてクチャクチャになるから山田花子で注文したの」

「先生に怒られない?」

「怒られた。でも気にしてない」

そう言って再び紙を揃え始める。

「なんで外でやってるの?」

校庭を見回しても楽器を持っている人はいない。

「サックスは外で吹いた方が良いんだよ」

「なんで?」

「サックスだから」

意味が分からない。

ハテナ顔をしている栄光に悠樹はパヒーと音を出した。

「ほら、音が響くでしょ?」
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