ぐらんでぃおーそ。
「でしょ?と言われても分かんないよ」

思わず笑ってしまう。

「エサト君にも同じコト言われた」

「…エサト君って?」

「えさしさとる」

『江刺聡』とまた地面に字を書く。

「さっきまで隣にいたんだけど、帰っちゃった」

その言葉を聞いて、胸が少し痛んだ。

名前も知らない人に恋して、せっかく名前が分かったのに失恋。

「エサト君は蛯名さんみたいに楽器吹かないんだね」

「多分ね。よく知らないけど」


「へ?」


「クラスは一緒だけどあんま話さないから分かんない」

「付き合ってるんじゃないの!?」

もしかして勘違いしていたのかもしれない。

「誰と?」

「エサト君と!」

もしかしなくても勘違いしていたのかもしれない。

「そんなこと言ったっけ?」



完全に勘違い。




「そうかぁ…付き合ってないのかぁ…」

ヘタリ、とその場に座り込む。

一気に気が抜けた。

「エサト君に恋ってヤツっすか?」

悠樹は栄光と同じように座る。

「恋ってヤツっす」

「だったらオイラが応援してあげるね」

勢いよく立ち上がり、サックスを吹き始める。

どこかで聴いたことのあるメロディー。
< 7 / 15 >

この作品をシェア

pagetop