みんなのせかい
もちろん今夜のターゲットである藤色のワンピースのOLだって、あと数分で今までの被害者と同様に三人の手に落ちるだろう。

暗幕の内側のような真っ黒な夜空にポツンと丸い月が浮かんでいた。

まるで今から起きるであろう惨劇を、下らない人間の愚かしさを、女の泣き叫ぶ姿を、高い高い空の上から心待ちにしているかのように浮かぶ月。

その思いのほか月の放つ明るい光が三人の残虐な部分を、より浮き彫りにしていた。

今日はバッグだけじゃなく女自身も奪おう……そう三人の目が言っていた。

あと少し歩くと夜は人気がない駐車場がある。

食品加工業の工場の駐車場で昼間の出入りは激しいが、夜は機械が完全に停止するらしく車の出入りは翌朝までほとんどない。

ジュンジがツトムとマサユキをチラリと見やった。

ツトムもマサユキも何も言わずに頷いた。

『次の曲がり角で襲う。』

三人の中に棲んでいる魔物がゆっくりと目覚めはじめた。



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