みんなのせかい
これから起こる惨劇を予想もしていない藤色のワンピースの女は相変わらず真っ直ぐ前を見て歩いている。

三人は女の後ろ姿を高ぶった心地よい緊張感を感じて眺めて歩く。

生きていく為に狩りをする野生動物のそれではなく、弱者を弄ぶための狩りのような残虐な高揚感。

三人の目が今までの泥のような目とは違う光を放つ。

街頭もぽつりぽつりで暗い夜道。

満月の光に反射して見えるはずのない三人のドロドロとした欲望が黒光りしているように見える。

もうじき曲がり角だ。

10メートル……8メートル……5メートル……2メートル……1メートル……。

少し前を歩く女に向け三人はダッシュした。

さぁ、残虐の舞台『ハント』の幕開けだ。


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