みんなのせかい
女は相変わらず空を見つめたままだ。


ツトムも女の体の感触を弄ぶためにゆっくりと近づいていく。

マサユキは相変わらず『下げちゃうよ~。ホ~ラ。』と女を挑発している。

ジュンジは女の口を力任せに押さえつけている。

どこからどう見ても女は絶体絶命の場面を迎えていた。

助けなど来るはずもない人気のない暗い駐車場。

女は焦点が定まらない瞳に月だけが映る。

その邪悪にも似た、それでいて慈悲にも思えるような月の光。

誰にも知らされない女の危機を遠く月だけが見ている。

助けることも止めることもせずに。

挑発をしていたマサユキが女の反応がないのに飽きたのか、ジュンジとツトムに向けて『やるか。』と投げた。

ジュンジも微動だにしない女の口を押さえる手を少し緩めた。

ツトムはニヤニヤしながら見ている。

月だけが観客の舞台の第二幕が開いた。


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