みんなのせかい
『君たちに暴力的な行為におよび、ジュンジ君とマサユキ君を死に追いやった彼女は許されないと思うかい?』

医師は少しだけ優しい目をしてツトムに問いかけた。

ツトムは何も答えずに医師の言葉を待つ。

『許されるんだよ、彼女の行動は。

時々起きるんだ。

こういう事件……いや事故かな?

極限までストレスを貯めた上に危機的状況に陥った時に、人によって普段では考えられない非常に陰惨な暴力行為に発展してしまう場合があるんだ。

そういう例は何件も報告されている。』

医師はひと呼吸おいて続ける。

『その事例の8割強が君たちが事故にあったような月夜なんだ。』

ツトムはぼんやりと浮かんで白い光を放つ、あの夜の丸い月を思い出した。

『……なんでだ?』

ツトムが聞く。

『なんで事件じゃなくて事故なんだ?

これは殺人事件だろ?』

ツトムの問いに医師は子供をたしなめるような口調で答えた。

『確かに彼女は人を殺した。

でもその殺人は許される範囲なんだ。』

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