【天使の片翼】
晴天続きのホウト国では、近頃、第九王子の花嫁候補によって、
新しい日常が生まれつつあると、もっぱらの噂であった。
「ソード王子!そこよ!もっとしっかり!いけ~!」
剣の鍛錬場では、今までにない、甲高い女の声が飛び交っている。
もちろん、その声の主は。
「ファラ王女・・・」
声援を受けた相手は、満面の笑みで、ファラに近づく。
そのたびに、ファラにつき従った侍女たちが、きゃ~、という、黄色い声をあげる。
『やっぱり、ソード様は、ファラ様に応援されて、まんざらでもないのね』
『本当。
女性には興味ないって噂だったけど、やはり、まだ幼くていらっしゃったから。
ファラ様のおかげで、女性に興味をもたれたようよね』
当初は、女が、鍛錬の場に姿を見せるなど、はしたない、などと反対していた侍女たちも、
本当は、興味があったのだろう。
一人、また一人と人数を増やし、いまや、ファラが、ソードに会いに来ると知れば、
そこらじゅうの侍女たちが、押し寄せて後につき従うようになっていた。